「ABX
3」という組成の有機金属ハロゲン化物の結晶形のひとつである「ペロブスカイト」が太陽電池材料として用いられ、高いエネルギー変換効率を安価な原料と簡便な製造プロセスで実現できると注目されています。瀬川研究室では、いち早くその特殊な電子状態に着目し理論計算を論文発表するとともに、単結晶のナノ秒時間分解蛍光分光などから励起子の挙動を解明し、世界最高レベルとなる24%を超える変換効率の太陽電池を実現しています。
ナノサイズの半導体微粒子は「量子ドット」と呼ばれ、量子効果による特徴的な電子状態を示します。量子ドットの吸収波長は粒子サイズに依存することから、瀬川研究室では近赤外領域に吸収を示す量子ドットを近赤外光電変換材料として効果的に働かせるための検討を行っています。
太陽光には幅広い波長の光が含まれるため、単一の太陽電池では光エネルギーの約33%しか電力に変換できません。バンドギャップ以下の光を吸収できない透過損失と、大きな光子エネルギーの一部を失う熱損失が存在するためです。本研究では、高エネルギー光子によって励起された際の余剰エネルギーをエネルギー移動させ1光子から複数の励起子を得る多励起子生成の研究に取り組んでいます。これにより、変換効率の理論限界を超える太陽電池の実現が期待されます。
色素増感太陽電池は低照度下でも十分発電できることなどの長所がありますが、従来は利用できる波長が可視域に限られていました。瀬川研究室では、近赤外領域にスピン反転励起により強い吸収を示す色素を開発し、これを用いた広帯域色素増感太陽電池を実現しました。さらに、この太陽電池とペロブスカイト太陽電池を組み合わせた太陽電池で21.5%という有機系太陽電池の世界最高効率を達成しました。
瀬川研究室では太陽電池内部に電気を蓄えることができる蓄電機能内蔵太陽電池を世界に先駆けて開発し、蓄電量のインジケーター機能も示すデザインパネルを作製するなど、高機能化を進めています。これらは、IoTデバイス向けの光エネルギーハーベスタやBIPV向けなどへの応用が期待されます。