低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発
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研究計画
  •  有機系太陽電池の高効率化には、電子輸送系の改良による高電圧化、近赤外光の有効利用による高電流化、新タンデム構造の実現などが課題である。代表的な有機系太陽電池には、色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池があるが、これらはこれまで異なる材料と方法論を用いていたため独立に研究されることが多かった。しかしながら、これらの光学的な集光論理、電子移動制御、ナノテキスチャリングなどにおいて本質的に共通する部分が多く、どちらのタイプもナノメートルスケールの構造と電子移動過程の制御が高性能化と高機能化の鍵となる。従って、両分野の研究者が相互に協力し合うことは重要である。本プログラムでは、高効率電子移動系実現に向けて基礎科学に立ち返り、合成化学、有機半導体物性、素子作成・評価技術、電気化学、材料化学、理論化学などの第一人者を結集し、有機系太陽電池の実用化に向けた研究を4年で実施する。
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  • 高耐久性有機系太陽電池の開発
  •   色素増感太陽電池については、電解液の固体化、高耐久性有機色素開発、新規ホール輸送材料開発等を行う。有機薄膜太陽電池については、封止技術、劣化要因解析を行う。新規有機半導体材料(ドナー及びアクセプター)を開発しながら、太陽電池特性と有機半導体構造や電池作製プロセス、発電層内部構造(バルクヘテロ構造)との相関関係をもとに高性能有機太陽電池を設計・作製する。波長制御レーザー励起光電流分布測定により、太陽電池の劣化箇所の経時変化を観察し分子種毎の劣化状態を明らかにする。また、これらの知見に基づいて、高耐久性の設計指針を確立する。
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  • 有機系太陽電池の光エネルギー変換効率向上
  •  有機系太陽電池の光エネルギー変換効率向上には、光吸収波長の広帯域化の技術開発が求められ、近赤外吸収色素開発や低バンドギャップ高分子開発が必要である。また、単セルの高効率化を図るためには、電圧の向上が必須であり、ホール輸送層の検討し、電圧向上策を検討する。さらにタンデムセル化による高効率化を検討する。有機薄膜太陽電池については、バルクへテロ接合素子の持つ限界を超え、励起子拡散長と電荷移動度の難題を解決することにより、高効率な有機薄膜太陽電池実現のために必要となる材料技術、素子技術、モジュール技術のそれぞれの基盤技術を確立する。また、熱刺激電流測定装置による電荷トラップの解析を行い、トラップサイトの起源を明らかにする。これらの知見に基づいて、電極やバッファ層の設計を行い効率的な電荷制御を行うことで高効率化を図る。
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  • 印刷技術を利用する大面積有機系太陽電池
  •  色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池の低コスト化を実現する高生産性プロセスの技術開発が必須である。このため、印刷技術を駆使したナノ構造形成、封止技術確立、タンデム化等について研究する。さらに、印刷プロセスによる多接合化技術の検討も行う。特に、多接合化に不可欠の非有機溶媒系の塗布型中間電極の新規開発を行う。
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  • 新原理を利用する革新的有機系太陽電池
  •  従来の色素増感太陽電池(電気化学)と有機薄膜太陽電池(固体物理)の電荷輸送原理を融合し、これらの太陽電池の延長線上にない、新たな有機固体系太陽電池を設計し、既存の有機系太陽電池の限界を超える高効率と高機能を引き出すための基盤技術を創生する。有機半導体のエネルギーレベル制御による有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率向上、中間層開発、光閉じ込め機能付与によるタンデム型有機薄膜太陽電池開発を行う。
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  • 蓄電できる太陽電池の開発
  •  太陽電池の普及に対して本質的な課題である出力電力安定化・制御を、発電デバイスと蓄電デバイスを組み合わせることにより実現し、ユーザービリティの向上を目指す。固体太陽電池では原理的に困難な機能に「蓄電機能」がある。蓄電は電気二重層をもつ反応系でのみ可能になり、電気二重層が介在する色素増感太陽電池では付帯させることが可能となる。蓄電可能な素子では、微弱な光もエネルギーとして貯めて出力可能になるだけでなく、光量が急激に変化する条件でも常に安定な電力を出力することができる。これまで炭素材料を蓄電層に用いた素子を考案し蓄電容量を2桁まで高める研究を行ってきたが、イオン伝導体層に還元性の高いイオン液体を用いた擬固体型素子では、光を遮断した後も電力が持続的に出力する太陽電池が得られることが判明している。この現象のメカニズムを解明し、高効率光発電に蓄電機能を組み込んだ太陽電池を製作する。
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  • 有機系太陽電池の基礎科学確立
  •  理論化学、理論物理学、分子分光学、合成化学、高分子化学、電気化学、など有機系太陽電池開発に必要な基礎科学を研究する。分子軌道計算により、ホール輸送層のHOMO-LUMOを推定し、HOMO-LUMOマップを完成する。また、高効率タンデム、ハイブリッドセルを実現するための、指針を提案する。吸光係数の大きな色素、近赤外光に感度をもつ増感色素を理論設計するとともに、新規な電極材料、電荷輸送材の開発により光電流、電圧の向上を実現する。
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  • 有機系太陽電池のフィールド試験
  •  開発された有機系太陽電池を用いて製作したモジュールの性能を、実使用環境下においてフィールド試験を実施する。 現在市販されている各種太陽電池と比較するため、同一使用条件下におけるフィールド試験を実施し、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、蓄電できる太陽電池等の性能評価を行い、製品化に向けた技術的課題を抽出する。既に実施中の4種類の太陽電池(多結晶、アモルファス、タンデム、CIGS)の試験設備に、今回開発の有機系太陽電池を同一条件で併設し、性能比較評価を行う。
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  • 有機系太陽電池の性能評価センター設置と標準化
  •   これらの研究を加速するため産官学の研究者を結集する集中研究室を東京大学先端科学技術研究センター内に設置する。また、財団法人神奈川科学技術アカデミーに有機系太陽電池の認証データを測定するための認証データ計測センターをおく。さらに、東大先端研に国際戦略企画室を置き、有機系太陽電池の国際標準化を推進する。以上のテーマについて、基礎から応用まで幅広く研究を進め、主要部分については企業群と緊密に連携を取りながら実用化を目指す。
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